三日月

大学の講義は年間30回と回数が決まっている。
専門学校は半年で15回だ。
90分の講義をそれだけ実施するのだから準備も必要だし、
年間の予定も大切になってくる。
ところが僕は様々な活動をしているのでなかなか予定通りにはいかない。
休講とすることも多い。
休講にしたらどこかで補講をしなければならない。
龍谷大学は15時からの4講目が僕の講義があるのでそのまま5講目に補講を入れる
ようにしている。
90分が連続するのだから3時間の講義ということになる。
僕も大変だけど学生も大変だ。
申し訳ないという気さえ起ってくる。
今日も講義が終わってキャンパスを出る時は18時を過ぎていた。
通学が途中の駅まで僕と同じ学生がサポートしてくれた。
歩き始めるとすぐにもうすっかり陽が落ちていることを学生は僕に伝えた。
それからとりとめもない話をしながら僕達は歩いた。
目が見えないおじさんを手引きして夜道を歩くなんて、
1年前の彼女には想像さえできなかったことだろう。
知るということが学ぶということの始まりなのだ。
僕達は何の問題もなく歩いた。
地下に入る駅の手前で学生は夜空を眺めながら僕に伝えた。
「綺麗な三日月です。」
僕達は夜空を見つめた。
教えてあげる喜びと教えてもらう喜びが交差した。
笑顔がこぼれた。
幸せを感じた。
(2016年10月8日)