阿久根にて

あてもなく走った車は海辺に着いた。
僕達は堤防の横から岩場に上った。
東シナ海の波の音がそこにあった。
風の音もそこにあった。
時々鳥の声も加わった。
でも主人公は静寂だった。
それぞれの音はそれを認識しているかのように緩やかだった。
無音がランダムに訪れた。
京都の日常では出会えない空間だった。
至極の時間が流れた。
旨いコーヒーが飲みたくなった。
無性に飲みたくなった。
僕達は阿久根駅のカフェに向かった。
(2016年10月13日)