キンモクセイ

PTAの研修会での講演だった。
僕はいつものようにそのままの自分で語りかけた。
笑いと共に理解が広がっていった。
「楽しい研修でした。」
司会者のまとめの感想が僕を満足させた。
悲しい話や辛い話はいくらでもできる。
涙腺を刺激することもできるし胸に刺さるだろう。
でもその後には同情や哀れみが生まれやすい。
笑顔で学び合った後には共感が生まれる。
そしてそれはきっと未来につながっていくのだ。
学校から駅まで手引きしてくださった女性は、
校門を出たところで足が止まった。
キンモクセイの香りに喜んだ僕の手をとって、
そっと花に触らせてくださった。
今年は会えなかったとあきらめていた香りが僕を包んだ。
今年も秋に会えた。
いや、ともだちになったばかりの彼女の目がエスコートしてくれたのだ。
(2016年10月19日)