乗車の際に運転手さんの声かけがあったので問題なく椅子に座れた。
雰囲気からすれば混んではいない様子だった。
僕は何も考えずにぼぉっとしながら時間を過ごした。
会話をする乗客もいなかったので静かな車内だった。
微かなエンジン音だけが流れていた。
時折流れる車内アナウンスを除けば映像も音もない空間だった。
心地よかった。
幾つ目のバス停だっただろうか。
ドアが開いた瞬間シャッシャッシャッシャッ、
クマゼミの大合唱が飛び込んできた。
夏が飛び込んできた。
僕は窓から外を眺めた。
真っ青な空にモクモクと入道雲があった。
力強い風景だった。
夏は強いなと改めて思った。
若い頃は冬が好きだったのにいつの間にか夏を大好きになっていた自分に気づいた。
衰えていく力への憧れなのかもしれない。
ドアが閉じてまた静寂が戻った。
バスを降りたらまず一番に空を見ようと思った。
(2017年8月11日)