初釜

赤い毛氈に静かに座る。
久しぶりの正座で背筋が伸びる気がする。
運ばれた花弁餅をゆっくりと味わう。
微かな白味噌の風味とごぼうの食感が口の中で調和する。
サポーターが床の間の掛け軸や米俵の置物などを耳元でそっと説明してくれる。
やがて薄茶の茶碗が僕の前におかれる。
「お点前、頂戴致します。」
両手を畳にについて挨拶をする。
昔教わった作法はもうほとんど忘れてしまっている。
見よう見まねもできない。
仕方がないので僕流で頂くことにする。
美味しくが一番大切と教えてくださった先生を思い出しながら茶碗を口元に運ぶ。
ほろ苦さが心を落ち着かせる。
僕の茶碗には梅と松の絵が描かれてあった。
なつめにも宝ヅくしの絵が描かれてあるらしい。
初春という言葉がとてもよく似合う空間で
時間は止まったふりをする。
心が穏かになっていく。
この穏やかさの向こうに平和が存在するのだろう。
世界中が平和でありますようにと何故か願っている僕がいた。
(2018年1月14日)