「春の匂いがしています。
春の音がしています。」
在校生代表の送辞の言葉は、
風景を超えた春模様から始まった。
京都府立盲学校の第133回目の卒業式、
わずか6名の卒業式、
京都府視覚障害者協会の役員の僕は、来賓として出席させていただいた。
以下同文の言葉はなく、
一人ひとりにしっかりと、卒業証書が授与された。
校長先生の式辞から、保護者の挨拶、送辞、答辞、
それぞれの言葉が、
重みを持ちながら、意味を持ちながら、
静かに、そしてしっかりと会場を包んだ。
すべての人が、6名の卒業を心から祝福し、
そして、これから始まるであろう社会の現実との試練に思いをはせ、
それぞれの未来に、心からのエールを送った。
式典が終わり、6名の卒業生が退場した。
6名は、ゆっくりと講堂の中を一周して出ていった。
送り出す後輩達、保護者、先生方、
関係者の拍手はなりやまなかった。
僕も、精一杯の拍手を送った。
気がつけば、
痛さを感じるほど、
手をたたき続けている自分がいた。
こみあげるものを我慢しながら、
必死に手をたたき続けている自分がいた。
鳴り響く音だけの世界の中で、
一人の大人として僕にできることを、
ささやかでもいいからしっかりとやりたいと、
強く強く思った。
(2014年3月3日)