ふきのとうの思い出

僕は下戸なので、
アルコールは飲めない。
楽しそうに酔っ払う友人を見ると、
いつも、幸せがひとつ少ないとひがんでしまう。
でも、飲めないのだから四方ない。
お酒が似合う和食屋さんのメニューには、よく、季節を感じるものがあって、
それを味わうのが、もっぱら僕の楽しみだ。
居酒屋さんで、ふきのとうの天ぷらを見つけた。
ちょっと時期が過ぎた気もしたが、
注文した。
口の中で、あの独特の苦味が広がった。
ふと、最近会っていない友人を思い出した。
数年前の春の始まりの頃、
ふきのとうの天ぷらを届けてくれた。
お互いに忙しくて、
なかなか会えなくなったが、
元気でいて欲しいといつも願っている。
映像がなくても、思い出には
色や香りが寄り添う。
こういう思い出を残せた出会いに、
心から感謝する。
友人の笑う声を思い出しながら、
そっと合掌してごちそうさまをした。
(2014年3月31日)