リレー

高校での授業が終わったのは、予定の12時10分だった。
待機してもらっていたガイドヘルパーさんと急ぎ足で学校を出た。
最寄りのバス停から四条までたった一駅だけバスに乗車し、
四条からは地下鉄に乗り換え、京都駅へ。
八条口改札に着くと駅員さんに、
「僕は全盲です。単独で東京の高田馬場まで行くのでサポートをお願いします。
特急券は自由席です。少しでも早い列車に乗りたいです。」
と申し出た。
日本盲人福祉センターでの会議が16時にスタートするのだ。
駅員さんは慣れた感じで、乗車の手配をし始めた。
乗換駅、到着駅、乗車予定ののぞみなどに連絡をすませ、
それから僕のところに来られた。
そこでガイドヘルパーさんとは別れた。
僕と駅員さんは呼吸を合わせ、
とても初対面とは思えないスピードで歩き、
新幹線ホームを端から端まで歩いて、のぞみの自由席の停車位置に着いた。
それからほどなく、乗車予定ののぞみがホームに入ってきた。
「急ぎ足でごめんなさいね。この列車にお乗せしたいと思ったものですから。」
駅員さんが笑った。
「ありがとうございます。急いでいるので助かります。」
「停車時間は90秒あるので、社内まで案内します。」
のぞみのドアが開くと、駅員さんは躊躇せず僕と乗り込み、
入口に近い座席に僕を座らすと、
「お気をつけて。車掌にも品川にも連絡してあります。」
それだけ言うと、すぐに降りていかれた。
まさに、プロの仕事だった。
のぞみが品川駅に着くと、品川駅の駅員さんが待っておられて、
山手線の電車への乗り換えをサポートしてくださった。
そして、山手線が高田馬場駅に着くと、やっぱり連絡を受けた駅員さんが待っていて
改札口まで誘導してくださった。
改札口でボランティアさんと合流して、雨の中を急ぎ足で歩いた。
日本盲人福祉センターの玄関に着いたのが、16時01分、我ながら見事な移動だった。
いや、見事にリレーしてくださった。
皆様に心からお礼申し上げます。
そうそう、のぞみの社内の隣の座席の男性、
僕が得意なはずのコンビニおにぎりで手間取ってしまった時、
これも手伝ってくださって、大変うれしかったです。
ありがとうございました。
(2014年6月8日)