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ひっつき虫

「おはようございます。」
朝の駅のプラットホームで同僚の女性が僕を見つけて声をかけてくれた。
目的地は同じ場所なので手引きでのんびり行けるなと、
僕は内心喜んだ。
それから彼女は、汚れていると教えてくれながら僕のズボンを叩いてくれた。
一瞬にしてそれが判るのだから目って便利なものだ。
「ひっつき虫ですね。どこを歩いてきたのですか?」
どうやら僕は、いっぱいのひっつき虫をズボンンにつけて歩いていたらしい。
人間の目とか脳とか凄い道具で、
道の途中にある草や飛び出している木の枝を察知したら無意識によけているのだ。
空中のお店の看板も雨上がりの水溜りも自然によけているのだ。
見えないと、それはできない。
日常、看板や木の枝にぶつかるし、
水溜りもジャブジャブ歩く。
痛いとか冷たいとか汚れるとか、
それはやっぱり残念なことだ。
ただ、ひっつき虫はうれしくなった。
見えないからこそ気づかずに草むらを歩き、
たくさんひっつけて歩いていたのだろう。
ズボンはきっと秋模様だったに違いない。
素敵なオシャレだなとうれしくなった。
そうそうこの前は、上着のポケットあたりにごはんつぶを付けて歩いていた。
帰宅して脱いだ時に手が触って判った。
ごはんつぶも乾燥していたし、
きっと昼食後ずっとつけて歩いていたのだろう。
いやひょっとしたら、数日前からかもしれない。
その間にいくつかの講演や授業をしたと思ったら情けない。
ワッペンに見えてくれてたらいいんだけど。
とにかく、ひっつくものには気をつけなくちゃね。
(2014年10月21日)