素敵に老いる

春休みのせいなのかイベントでもあるのか、
地下鉄の北大路の駅は多くの人だった。
僕はいつもより緊張感のレベルを少しあげて、
白杖で路面を強めにたたいて音を出すようにしながらゆっくりと歩いた。
周囲の人に気づいてもらうことで、
ぶつかるリスクが少なくなるからだ。
突然ご婦人が僕の腕を持って、
「一緒に行きましょう。」と声をかけてくださった。
僕はいつものように肘を持たせてくださいと言いながら、
瞬時に彼女の肘を持った。
一緒にエスカレーターに乗り電車に乗り、座席も隣同士で座り、
その間いろいろな話をした。
会話の途中で彼女が87歳だと知った。
彼女の姿勢、歩き方、会話の内容、
どこにもその年齢は感じられなかった。
僕は聞き間違ったと思って、再度聞き返したほどた。
元気の秘訣を尋ねたら、
粗食と鍛錬とおっしゃった。
今日もこれから体操に行くところとのことだった。
老いと実年齢はやっぱり違うものなのだなと痛感した。
何よりも、
いくつになっても社会に参加し、
そして誰かの力になろうとする生き方は素敵だと思った。
僕はこのままではヨボヨボの文句言いのジジイになりそうだから、
まずは精神の鍛練が必要なのかなぁ。
それに食べることは大好きだから、
粗食には耐えられないだろうしなぁ。
別れ際に、
「気をつけてね。」と言ってくださった彼女に、
「100歳を狙ってくださいね。
そして100歳になっても手伝ってくださいね。」
と伝えた。
「もちろんよ。」
彼女は笑顔でそうおっしゃった。
それを実現させるには、僕も後13年は一人で歩くということになる。
頑張ります。
(2015年3月29日)