曼珠沙華

見えなくなってもう18年も経つのだから、
いろいろな画像の記憶が確かなものなのかどうか自信はない。
先日も黄土色を思い出そうとして苦労したし、
群青色はもうあきらめてしまった。
あきらめるのは悔しいのだけれど仕方がない。
ただ、突然蘇るものもある。
先日学校の校庭で知り合いの先生が彼岸花が咲いているのを教えてくださった。
僕は触らせてくださいと頼んだ。
僕の指先がそっと彼岸花をなぞって動いた。
僕の頭の中に水色に近い青い色が浮かんだ。
空の色だ。
そしてそれを背景に朱色の彼岸花が蘇った。
曼珠沙華という単語も燃えるような朱色と一緒に蘇った。
まるで一枚のフォトグラフのようだった。
いつどこで写されたものか判らない。
僕の人生のどこかで巡り合った画像なのだろう。
忘れていくのは残念だけど、
またどこかで会える日もあるのかもしれない。
なんとなくそんな気がした。
(2015年9月19日)