命日

365日の間に数えきれないくらいとうちゃんを思い出した。
とうちゃんと歩いた道、とうちゃんと入った店、とうちゃんと食べた料理、
とうちゃんと話したこと、とうちゃんの声、とうちゃんの顔・・・。
それは僕が大人になったからのものだけではない。
僕が子供の頃、働いていたとうちゃんの顔、車を運転していた時のとうちゃんの顔、
あらゆる場面のとうちゃんの顔を思い出した。
自分の顔は忘れてしまったけれど、とうちゃんの顔はちゃんと憶えている。
憶えているのにその顔が笑っているのか怒っているのか判らない。
もうちょっとやさしい言葉をかけておけばよかった。
もうちょっと一緒に過ごせばよかった。
もうちょっと何かしなければいけなかった。
思い出す度に後悔の念だけが大きくのしかかった。
でももうとうちゃんはいない。
どうすることもできない。
時間が経てば少しは楽な気持ちになるかと思ったが変化はない。
きっとずっと引きずって生きていくのだろう。
弱虫の僕は何回も泣きべそをかくのだろう。
こういうことって受け止めるしかないのだ。
見えなくなった時にただどうしようもなくて受け止めたように。
(2015年11月2日)