光のカーテン

僕は専門学校や大学の非常勤講師をしながら、
講演活動や執筆活動などにも取り組んでいる。
そしてその他にも様々な活動にも参加している。
時々何をしている人なのかを尋ねられて困ることもあるのだけれど、
「見える人も見えない人も見えにくい人も笑顔で参加できる社会」
を目指しているということがすべての活動の共通項だろう。
ウィキペディアには「社会福祉活動家」という紹介をしてあるらしいが、
的を得た表現なのかもしれない。
その活動の中で、月に2回ピアカウンセラーという仕事もやらせて頂いている。
視覚障害になった人、特にまだ間もない人などの悩みを聞いたり相談にのったりするのだ。
僕が経験したことが誰かの力になるのなら、それはとても光栄なことだ。
決していつもうまくいくわけではないけれど、気持ちを込めて取り組んでいる。
今日出会った人は僕と同じ病気でだいぶ見えにくくなっておられた。
最初に聞いた声には不安が宿っていた。
「失明」ということを現実として向かい合った時、
誰でも恐れおののき悲しみ苦しむ。
すぐに切り替えて前向きに生きていくなんて人間には出来ない。
白杖なんか触る気にもなれない。
僕もそうだったことを彼に伝えた。
そして人は皆それを受け止める力を本当は持っていることもしっかりと伝えた。
1時間半あまりの時があっという間に流れた。
僕は最後に彼としっかりと握手をした。
僕の手を握り返した彼の手の力を感じながら、
もうそんな遠くない日に彼が歩き出しそうな気がした。
いや、僕自身がそう願ったのかもしれない。
仕事が終わり、迎えに来てくださったボランティアさんと京都駅を歩いたら、
たくさんのLED電球で飾られた光のカーテンが揺れていた。
「12月ですからね。」
ボランティアさんが僕につぶやいた。
その方向を見つめながら、
さっきの彼が今まだ見える間に、この美しさも見て欲しいなと思った。
そして一緒に来られていた家族と少しでも笑顔を交わせるクリスマスになるようにと
心から願った。
(2015年12月2日)