運勢

運がいい日もあればあまり良くない日もある。
気にしないと言いながら朝のテレビの運勢占いが聞こえれば聞いてしまう。
基本的には小市民なのだろう。
目が見えるとか見えないとかは関係のないことなのかもしれない。
僕のその日の運勢はバスから始まる。
僕が空いてる席に座るためには運転手さんや乗客の方からの情報が必要になる。
運が悪かったら何度バスや電車を乗り換えても座れない日もある。
今朝は運が悪かった。
座れる時にはほとんど乗車した瞬間に声がかかる。
今朝は何の気配もなく桂駅までの20分を立ったまま過ごした。
大宮へ向かう電車もそうだった。
せめてここくらいはと思いながら乗車したライトハウス行のバスもだめだった。
結局30分近くを立ったまま過ごした。
悔しいとか悲しいと思うのはいやだから、
座れない日は体力作りだと自分に言い聞かせることにしている。
負け惜しみみたいなものだ。
その後の移動も運は良くはならなかった。
午後再度ライトハウスへ向かうため市役所前からまたバスに乗車した。
やっぱりだめかとあきらめようとした時、
誰かが僕のリュックに合図をくれた。
「席、空いていますよ。」
ご婦人が自分の横の空席を僕に教えてくださった。
40分の立ちっ放しを覚悟していた僕は本音をつぶやいてしまった。
「これで座ったままライトハウスまで行けます。本当にありがとうございます。」
それから僕とご婦人との会話が始まった。
ご婦人が途中下車されるまでのわずかな時間、僕達の間に暖かな空気が流れていた。
人間同士が醸し出すことができるものだった。
豊かな時間だった。
運勢は一気に好転した。
午前中は体力作りで午後は心の栄養補給、今日はとってもいい日だな。
現金な僕はうれしくなっていた。
(2017年3月13日)