コーヒーカップ

東京のホテルの部屋、
4時過ぎに目が覚めてしまって困惑する。
もう少し眠ろうかと思案している間にすっかり目覚めてしまった。
仕方なくベッドから起きだしてシャワーを浴びる。
それからポットに水を入れてお湯を沸かす。
お湯が沸騰する間にイノダのスティックコーヒーを取り出してカップに入れる。
旅先にいつも京都から持参しているものだ。
お湯が沸いたら静かにカップに注ぐ。
コーヒーの香りが室内を泳ぎだす。
光も音もない空間で香りだけが存在を主張する。
熱い液体を吐息で冷ましながらゆっくりとノドに流し込む。
ほろ苦さを楽しみながらふと今日は何曜日だろうと考え出す。
一週間前は北海道だったことを思い出す。
楽しみにしていた北海道はあっという間に過ぎ去った。
おまけに台風の影響で滞在が一日短くなってしまった。
それでも思い出して笑顔になるのは豊かな時間だったからだろう。
たった一週間なのに記憶は遠くにある。
そしてどんどん遠くに過ぎ去っていくのだろう。
来月は鹿児島県に出かける予定だ。
あの北海道でお土産にもらった木製のコーヒーカップを持参しよう。
きっと朝のコーヒーがもっとやさしくなる。
(2017年10月29日)