時間の感覚

早朝からの会議を終えてライトハウスを飛び出した。
僕なりのスピードで動き始めた。
次の用事が待っている。
桂到着予定時間を11時20分に設定した。
千本北大路から46号のバスで四条大宮に向かった。
予定通りだ。
そこから地下の阪急大宮駅に向かわなければいけない。
距離にすればたった100メートルくらいかもしれないが、
僕には難関の場所だ。
交通量の多い道路の狭い歩道、すれ違うのも大変な感じの場所だ。
右に行き過ぎると車道に出てしまう危険性がある。
左には電柱があり斜めの金属ロープが張ってある。
それは顔の高さにあるからぶつかることもある。
そして自転車もよく通る。
たった100メートルに向かう前に僕はよく白杖を握り直して深呼吸をする。
集中力を高めているのかもしれない。
この狭い道を無事通過しなければならない。
僕もケガをしたくないし他人に迷惑をかけてもいけない。
しっかりと周囲の音を聞きながらそしてゆっくりと歩く。
不安がよぎったら必ず止まる。
そして気持ちをリセットする。
その繰り返しが安全につながっていく。
今日も深呼吸をして動き始めようとした時、サポーターが現れた。
僕を追い越して行ってから気になって戻ってきたとのことだった。
僕はサポーターの肘を借りて駅まで移動した。
移動の最中での会話で行先が同じ桂ということが確認できた。
サポートを桂まで延長してもらうことにした。
僕達はいろいろと話しながら歩いた。
電車の中でも会話を楽しんだ。
桂に着いた。
「お蔭でのんびりと帰ってこれました。」
僕は御礼を伝えた。
「たまにはそんな日があってもいいですね。」
サポーターが笑った。
改札を出たところで時間を確認したら11時10分だった。
予定よりも10分も早く着いた。
サポーターとのんびり動く方が
僕が単独で急いで動くより早いことに気づいた。
不思議な気がした。
(2017年11月11日)