恐怖心

久しぶりの道を歩いた。
数年前までよく歩いていた道だ。
難関の六車線の長い横断歩道も無事渡った。
そこでほっとしてしまったのかもしれない。
直角に曲がるつもりが斜めに歩いてしまったらしい。
それにさえ気づいていなかった。
いつの間にか車道に飛び出して歩いてしまっていた。
「そこ車道だよ。」
信号で停車中の車の運転手さんが大声で教えてくださった。
遠くからだったけど男性の太い声が僕に向けられているのが判った。
僕は慎重にゆっくりと歩道側と思われる方向に動いた。
身体中に広がる恐怖心をあやすようにしながら動いた。
どこからかまた別の女性が近寄ってきて支えてくださった。
そして横断歩道の点字ブロックまで誘導してくださった。
見るに見かねてのことだったのかもしれない。
御礼を言うのがやっとだった。
なんとかそこからバス停までたどり着いてバスに乗車した。
座席に身体を預けたらまた恐怖心が蘇った。
泣きそうになった。
僕は目が見えないんだ。
見えない状態で歩いているんだ。
恐怖心が現実を直視させた。
事故に遭いたくない。
強く思った。
今度目が見える人とあの場所まで行って練習をしよう。
頑張ればきっとクリアできる。
頑張ればきっとクリアできる。
何度も呪文のように言い聞かせていたらちょっと楽になった。
2018年1月10日)