隠し味

あつあげと青大豆のご飯、
大根とあつあげの煮物、
自家製鶏肉のハムと三つ葉の酢味噌和え、
きのこと鶏肉ミンチ団子のスープ、
久しぶりに本当においしい食事を頂いたような気がした。
ロービジョンの女性達が作ってくださった。
目が少しずつ悪くなる中で
大好きな料理ができなくなるのではと心が折れそうになっていたらしい。
「調理の時、誰も手元なんか見ていないわよ。」
何気ない言葉にハッと気づかされたとのことだった。
見えないと包丁は危ないのではと尋ねられることがある。
でも実際には何の問題もない。
そんなに料理をしない僕でもリンゴの皮むきくらいはできるし手を切ったりすること
はない。
指先の皮膚感覚で見ているからだろう。
目が見えなくなる頃、何もできなくなってしまうという思いになった。
失敗することやできないことを数えていった。
きっと恐怖心がそうさせていたのだろう。
実際には見えなくてもできることは結構あると判った。
道具を使ったり工夫をしたりすることでそれがもっと広がることも知った。
少しずつ元々の自分を取り戻していった。
できる喜び、それは幸せ。
そんな思いが隠し味になっているのだからおいしいのが当たり前なのだろう。
また食べたいと思った。
(2018年3月10日)