2通のメール

同じ日に2通のメールが届いた。
24歳と92歳、どちらも女性というのはちょっとうれしい。
24歳の女性とは彼女が19歳の時に出会ってから5年ぶりに再会した。
当時の目標を彼女は達成できなかったらしく、
この5年の時間の中で苦しんだり悲しんだりしたらしい。
彼女の心の中では挫折の領域だったのだろう。
どう生きるのかということと向かい合う日々を過ごしたらしい。
5年ぶりに一緒に歩いた彼女は素敵な大人の女性になっていた。
悲しみや苦しみは少ない方がいい。
避けて通りたい。
でもそれは長い人生のどこかで意味を持ってくるのだろう。
きっと幸せにつながっていくのだろう。
92歳の女性は今まさに失明と向かい合っておられる方だ。
教え子の介護士から紹介された。
たまたま出会った僕の著書が少しは役に立ったらしい。
僕は感謝の手紙を介護士に託した。
僕は40歳で光を失った。
人間が人生の最後のステージでその事実と向かい合わなければならないとはどういう
ことなのだろう。
僕には想像さえつかない。
そこまでどう年を重ねてきたかということがカギになるのかもしれない。

2通のメールを以下に貼り付けておきます。
同じ日に届いたということが僕へのメッセージのひとつになりました。
生きるということは深い営みの中にあるのかもしれません。
これ以上の僕の言葉は薄っぺらくなるのが判っているので書きません。

昨日は、楽しくて豊かな時間をありがとうございました。
私の下手くそな誘導に、根気よく付き添っていただき、感謝しています。
紳士的でチャーミングなおじさまとデートができて1日中幸せでした。
一時期は京都に行くのが辛くて、意識的に避けていたこともあったのですが、
昨日 松永さんとゆっくりとお散歩をして、改めて「京都ってきれいな街だなぁ」と
思いました。
桜も、すれ違う着物の女の子たちも、鴨川も、整然とした道も何もかもきれいでした。
京都で学生生活を送ることができ、本当に良かったです。
そして、「松永さん!」と声をかけてくれる人たちや、電車やバスで席を譲ってくれ
る方々、出会う人たち皆んなが、とても優しい笑顔でした。
もしも、暇で暇でしょうがない日や、書類整理が面倒で泣きそうな日があれば、いつ
でも呼び出してくださいね。

ご丁重な お手紙をありがとうございました。
思いがけないことで感謝の思いでいっぱいです。
先生からじきじきのお便りを頂けるなんて夢のようです。
ここに至るまでの多くの方のご好意とつながりに感謝です。
私のために先生の御本を買ってくださった方、カセットテープに録音してくださった
方、そして私の感動を先生にメールしてくださった介護士さん。
私は、こんなやさしさと、いたわりに囲まれている幸せな92才のおばあさんです。
今失明を間近に感じながら日々を過ごしていますが、大丈夫です。
まだ少し残されている光を感謝しつつ歩みたいと願っています。
先生の御本にお出会いできたおかげでこんなに大きな恵みを頂いて感謝いっぱいです。
ありがとうございました。
先生の御健康と御活躍をお祈りしつつ一言御礼申し上げたくつたないペンをとりまし
た。

(2018年3月30日)