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募金

JR桂川駅に着いた。
駅前ではあしなが育英会の募金活動が行われていた。
募金は交通事故や自殺などで親を亡くした子供達の奨学金となる。
僕は見えている頃児童福祉の仕事に携わっていた。
大好きな仕事だった。
見えなくなって仕事は続けられなかったけれど思いだけはずっとある。
だからあしなが育英会に出会ったら必ず募金すると決めている。
けちん坊だから金額に迷うので、
小銭入れにある小銭を全部寄付と10年くらい前に決めた。
小銭がなかったら千円札1枚だ。
そう決めておけば迷うことはない。
ところが数年前、愕然となったことがあった。
友人に貸していた7千円が500円玉で返ってきたことがあって、
その帰りにあしなが育英会と出会ってしまったのだ。
「どうして今日なの?」
さすがに一瞬迷ったが、意を決して募金した。
苦い思い出だ。
思い出が苦いということは根っからのけちん坊ということなのだろう。
今日はそんなには入っていなかった。
千円には届かなかったかもしれない。
僕はいつものように係りの人にコインを渡した。
「小銭入れに今日はこれだけしかありませんでした。ごめんね。」
「ありがとうございました。」
担当の若者が驚くような大きな声でありがとうを言ってくれた。
あんなに喜んでくれるのならもう少し入っていれば良かったのに。
僕はまた少し変な後悔をした。
やっぱり僕は現金な奴です。
(2018年10月28日)