雪の夜、ふと耳を澄ます。
いつもと違う静けさが存在している。
雪のせいで交通量が少なくなっているからかもしれない。
でも、それだけとは思えない静けさだ。
無音と言ってもいいかもしれない。
雪が音を吸い込んでしまうのだろうか。
少しだけ窓を開けて外を眺める。
画像のない絵画の美しさに気づく。
静寂の中に水墨画のような風景がよく似合う。
専門学校で僕の講義を受けた女子学生との会話を思い出した。
「日本で美しいと思ったものは何?」
彼女は即答した。
「雪です!」
彼女の生まれ育ったベトナムでは雪は降らないとのことだった。
人間が美しいと思うもの、
性別も世代も国境も越えていくのだろう。
半年間の講座が終わって、彼女は僕のサポートができるようになった。
やさしさもまた、国境を越えていくのだ。
(2019年1月27日)