流れ星

後輩からメールが届いた。
不定期に届くメールだ。
気が向いた時に送ってくれるのだろう。
題名はいつも同じで「祥治です」となっている。
年齢は僕よりは10歳くらい下だろうか。
祥治は板前をしている時に、仕事の帰りに交通事故で失明した。
ノーヘルで電信柱に激突したらしい。
若いころは暴走族で運転技術を磨いたらしいが、
酔っ払い運転ではどうしようもなかったのだろう。
家庭にも恵まれず、職も転々としていたような中での交通事故だった。
「ほんまに片目が飛び出したんですよ。」
祥治が笑いながらその時のことを教えてくれたのを憶えている。
脳に強い衝撃を受けてしまったので後遺症も大変だ。
様々な福祉制度を利用して一人暮らしをしている。
継続は力ですと言いながら、継続できたためしがない。
ひょうひょうと生きているという感じかな。
祥治の名前の漢字を調べるためにパソコンのカーソルを動かしたら、
「不祥事の祥」という説明が流れて一発で憶えてしまった。
よく似合う名前だねと言ったら照れていた。
今回のメールには「ペルセウス座流星群」のことが書いてあった。
そう言えば、以前も何かの流星群のニュースを教えてくれたことがある。
祥治は流れ星が好きなのかもしれない。
全盲の中年男性が全盲の先輩に流れ星のニュースを伝える。
不思議な感じはするが、僕達に違和感はない。
いつか一緒に流れ星を見に行こうか。
そして祈ろう。
「目が見えるようになりますように!」
(2020年8月13日)