あら煮

宮津市の高校まで出かけた。
漁業関係に進みたい高校生達が学ぶ高校だ。
学校は海のすぐ横にあり、校内に桟橋がある。
そこには学校の実習船が停泊している。
校舎内にはあちこちに水槽があっていろいろな魚が泳いでいる。
小学校低学年の頃、船長さんに憧れていた僕には夢の学校だ。
海の近くで育ったのでいつも船を見ていたからだろう。
港にはいつもいろいろな漁船がつないであった。
ちょっと不思議な感じの高校だが、生徒達は普通の高校生だ。
しっかりと話を聞いてくれたしいろいろな質問もしてくれた。
有難いことだと思った。
この学校にはもう数年出かけているのだが、もうひとつ楽しみがある。
駅前の食堂でのお昼ご飯だ。
予定の電車を早めて到着するようにしている。
お刺身定食が目当てだ。
新鮮なお刺身がたくさん着いていて信じられない安さだ。
まさに堪能できる。
今回は「あら煮」も追加した。
山盛りのあら煮を黙々と食べた。
見えないと魚の骨が危なくないかと心配されることもあるが何の問題もない。
唇、歯、口中の触覚で対応できている。
おいしいものを食べている時は見えないことも完全に忘れてしまっている。
おいしさの中で幸せになっている。
食べ終わってしばらくして、店のおばちゃんが食器を片付けにこられた。
「まあ、きれいに食べたね。」
おばちゃんは驚いたような声を出された。
「おいしかったです。」
僕はまさにドヤ顔で答えて微笑んだ。
また来年も宮津に来れたらいいな。
このお魚を食べに、いやいや、高校生に会いに。
(2021年1月21日)