赤いハートのシール

先輩はいつも決まったガイドさんと通院しておられる。
そのガイドさんと出会ってもう6年になるそうだ。
先輩は弱視で僕よりお姉さんだ。
一人暮らしで頑張っておられる。
気丈に振舞っておられるがいろいろと不安もあるのだと思う。
ある時、通院の時にガイドさんは残りの薬の数が合わないことに気がついた。
「お薬は忘れたらだめですよ。」
ガイドさんはシールを買ってきて先輩の部屋のカレンダーに貼った。
ハートの形の赤いシールだ。
先輩の目でも確認できるシールだ。
「お薬を忘れるとガイドさんに怒られるの。」
先輩はうれしそうにつぶやかれた。
その話を聞いて無関係の僕もとてもうれしくなった。
「赤いハートのシール、喜んでおられましたよ。」
僕はそのガイドさんにそっと伝えた。
ガイドさんは先輩の人柄がそうさせたのだとのことだった。
先輩とガイドさん、家族でもないし幼馴染でもない。
福祉サービスをする人と受ける人という関係だ。
仕事上の関係だ。
それでも人間同士はやさしさを分かち合えるのだ。
寄り添うってことなのだろう。
人間って本当に素晴らしい。
(2021年3月27日)