くちなしの花

今年度もまた大阪府の高校で授業をすることになった。
教員免許は持っていないので特別講師という位置づけだ。
高校生達に出会えると思うとワクワクした気持ちになる。
教室の空気がキラキラとしているからだろう。
未来に関われるということになる。
今年度最初の出勤日、僕はまた新しい気持ちで学校へ向かった。
この学校は最寄り駅から離れているので単独で行くのは無理がある。
僕は例年のように、ボランティアさんのサポートを受けながら学校への道を急いだ。
「焼肉屋さんだった場所は空き地になって雑草が生えていますよ。」
もう何年もサポートしてくださっているボランティアさんが教えてくださった。
焼肉屋さんになる前は中華料理屋さんだった。
その頃は数回訪れた記憶がある。
この学校に行くようになってどれくらいの年月が流れたのだろう。
たまたまテレビに出演していた僕を見た学校関係者がお招きくださったのがスタート
だった。
丁度50歳の時だ。
ということは今年で15年目ということになる。
どれだけの数の高校生に出会ったのだろう。
最初の頃に出会った高校生達はもう30歳を越えているということになる。
蒔いた種が少しは芽を出しているかもしれない。
数にもその強さにも自信はない。
でもあのキラキラの教室で共感した時間は確かだ。
そんなことを思いめぐらしながら校門を入った。
「くちなしの花が咲いていますよ。」
ボランティアさんが教えてくださった。
僕はくちなしの花を触らせてもらった。
そして顔を近づけて香りを嗅いだ。
初夏の高校の校庭に白いくちなしの花がよく似合うと感じた。
(2021年6月27日)