視能訓練士

京都府の北部の病院で働いている彼は、
仕事が終わってから、
3時間車を走らせて、
僕達との会食に来てくれた。
昨夜の会食は、皆、自己負担。
交通費も出ない。
でも、彼は、喜んでと、来てくれた。
見える人3人、見えない人3人、
ささやかな食事をしながら、
僕達は、目のことを話した。
日本のあちこちで、
まだうつむいて、
僕達との出会いを待っているはずの仲間のことについて話した。
僕達に、どんなことができるのだろうと、話した。
彼の職業は、視能訓練士、
目の検査などに携わる専門家だ。
彼は、医療に携わる彼の立場で、
僕達も笑顔で生きていける同じ未来を見つめた。
丁寧な語り口に、彼の誠実さがにじみ出ていた。
僕達は、笑いながら、時には、シビアな意見にも耳を傾けながら、
あっという間の3時間を過ごした。
それぞれが、それぞれの収穫みたいなものを実感しながら、
次のステージでの再会を誓った。
僕は、烏丸で皆と別れて、
阪急電車で、地元の桂駅へ向かった。
桂駅に着いて、改札を出て歩き出した時、
僕を呼ぶ声がした。
僕が御世話になっている眼科のドクターだった。
ちょっとの時間の立ち話で、お互いに、会食の帰宅途中だと判った。
白衣を脱いでいる彼は、一市民として、僕のサポートを申し出てくれた。
点字ブロックまでのわずかな距離を、手引きで歩きながら、
手引きしている、されている、この二人のオッサンの風景をイメージした。
かっこいいと思った。
ドクターと別れて、乗車したバスの中で、
また、3時間かけて帰路に着いている視能訓練士の彼を思い出した。
僕達の未来に、思いを寄せてくれ、力を貸してくれる医療スタッフがいてくれる
ことを、心から有難いことだと思う。
そして、きっと、つながりが、
大きな力となっていくだろう。
(2012年9月9日)