真っ白な新米

米どころの有人から新米が届いた。
開けた箱の中には僕の好物の海苔巻きおかきなども入っていたから笑ってしまった。
届けてくれたのは視覚障害の有人だった。
見えていた頃は学生時代の同級生や職場の先輩や同僚などとのお付き合いがほとんど
だった。
見えなくなってからたくさんの視覚障害の仲間と出会った。
時には視覚以外の障害の人とも出会った。
その数は少しずつ増えていった。
見える頃は故郷の鹿児島県と居住地の京都での交流がほとんどだったが、見えなくな
って地理的にもどんどん広域になっていった。
障害者団体の活動に参加したり同行援護の制度に関わったのが大きな理由だろう。
当たり前のことだけど、障害があろうがなかろうが素敵な人に出会うことになった。
素敵な人に出会うと僕自身の人生が豊かになっていった。
「白鳥が朝晩鳴き交わして飛んでいきます。
毎年の冬の使者です。
耳で季節を感じることにも慣れてきました。
大雪しないことを祈るばかりです。
お米を送ったとの知らせのメールにはそう書かれてあった。
僕は炊き立ての新米を味わいながら僕の知らない土地の暮らしを想像した。
真っ白に輝くご飯が真っ白な雪に溶け込んだ。
彼女の心が織りなす風景が伝わってきた。
その空に舞う真っ白な白鳥もきれいだろうなと思った。
秋から冬に白が輝き出すのだ。
彼女の心配とは裏腹に僕の心はそれを期待してしまう。
雪国での白杖は大変なのよと怒られそうだ。
そうか、真っ白な白杖もその風景に似合うかもしれない。
いつか訪ねてみたいと思った。
(2022年11月25日)