ポインセチア

新島記念講堂の入り口には大きなクリスマスツリーがあった。
館内にはパイプオルガンの音色が響いていた。
生演奏だった。
厳粛な空気と12月のやさしさが同居していた。
僕は心を落ち着けて話をした。
いや、パイプオルガンの前奏の中で心が自然に穏やかになっていった。
空から降ってくる音の中で洗浄されていくような不思議な感覚だった。
心の中で讃美歌を口ずさみ最後にアーメンと唱えた。
礼拝を終えて出口に向かう時だった。
ポインセチアの鉢植えが並んでいることを教えてもらった。
僕は足を止めてそこにしゃがみこんだ。
右手の白杖を左手に持ち替えた。
それから空いた右手でポインセチアをそっと触った。
明るい赤から黒に近い赤までいろいろな赤が脳裏に浮かんだ。
以前どこかで葉と思う部分が実際には花だと聞いたような気もする。
そのいくつかの葉を触りながら赤色のグラデーションが僕を取り囲んだ。
今ここに生きていることが幸せだと自然にそう思えた。
久しぶりの美しい赤色を見た。
立ち上がって関係者に感謝を伝えて歩き出した。
歩きながら空を眺めた。
この空がウクライナにも続いている。
そう思ったら奥歯を噛みしめてしまった。
平和への祈りが届きますようにと心から願った。
(2022年12月24日)