読書

年齢のせいで朝早くに目が覚めるようになってしまった。
まだ朝日も出ないうちから起きてしまうのだ。
脳はもっと眠りたいと思っているようなのだが仕方がない。
そのせいなのだろう。
昼食後には身体が昼寝を要求しているのが分かるし、夜9時には睡魔に襲われる。
悔しいと思う日々だ。
かかりつけのドクターに相談したら、寝る時刻をもう少し後ろにずらすようにとのア
ドバイスだった。
とにかく、目が覚めてから動き出すまでの時間を持て余している。
同世代の視覚障害の仲間に尋ねてみたら読書の時間にしているという人が結構いた。
見えなくなってから、僕は読書をしなくなった。
見えていた頃、むさぼるように文庫本を読んだ時期があった。
まさに読み漁った。
紙とインクの匂い、ページをめくる指先の感触、懐かしい。
視覚障害者の仲間には趣味が読書という人は結構多い。
点字で読む人が2割、録音図書が8割くらいかな。
僕が読書をしなくなったのは何故だろう。
目で活字を追うあの感覚がないせいかもしれない。
結局コーヒーを飲みながらぼぉっとしている。
最初の頃は時間の浪費みたいでもったいないと感じていた。
最近は贅沢のひとつだと思えるようになってきた。
時間の旅もいいものだということにしておこう。
現役を引退したら読書をするのかもしれないとなんとなく思うこともある。
読書そのものより、読書をするおじいさんの姿に憧れがあるのかもしれない。
(2023年10月22日)