International White Cane Awareness Day

International White Cane Awareness Day
11月15日は国際白杖の日だった。
僕は京都市西京区女性会の研修講師としてお招きを受けていた。
会場には各学区の役員さん達が集われていた。
前半が僕の講演、後半が視覚障害の音楽家である楊雪元(ようせつげん)さんのライ
ヴだった。
まさに、国際白杖の日にふさわしい内容だった。
「ブログ、読みました。」
最初の挨拶の時、司会者の方がおっしゃった。
さりげなく応援してくださっているのを感じた。
僕はいつものように心を込めて話をした。
目の前には灰色以外は何もない。
明るさも暗さも何もない。
未来を見つめながら話をした。
祈りながら話をした。
皆さんが真剣に聞いてくださっているのが伝わってきた。
大きな拍手をくださった。
うれしかった。
自分の講演が終わった後は一人の観客として楊雪元さんのライヴを楽しんだ。
楊雪元さんは生まれながらの全盲だ。
中国で笛奏者のプロとなり、日本にきてからは芸術大学で声楽も学ばれた。
こういう人のことを天才というのだろう。
笛奏者でありながらピアノも演奏されるしテノール歌手としての歌声も素晴らしい。
白杖に穴を空けて作った笛で演奏されたのには笑ってしまった。
竹内まりやさんの「いのちの歌」も披露してくださった。
『生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
この星の片隅で めぐり会えた奇跡は
どんな宝石よりも たいせつな宝物
泣きたい日もある 絶望に嘆く日も
そんな時そばにいて 寄り添うあなたの影
二人で歌えば 懐かしくよみがえる
ふるさとの夕焼けの 優しいあのぬくもり
本当にだいじなものは 隠れて見えない
ささやかすぎる日々の中に かけがえない喜びがある
いつかは誰でも この星にさよならを
する時が来るけれど 命は継がれてゆく
生まれてきたこと 育ててもらえたこと
出会ったこと 笑ったこと
そのすべてにありがとう
この命にありがとう』
最初のフレーズで見えなくなった頃を思い出した。
歌声が心臓の鼓動をたたいた。
涙がこぼれそうになった。
見えない世界で生きてゆくことの意味、本当はまだ見つけられないのかもしれない。
泣きたい日も絶望に嘆く日も今でもある。
弱虫なのだと思う。
でも、ここまでこれたのは間違いなく出会った人達がいたからだ。
見えない僕にできること、見えない僕がしなければいけないこと、それは感謝を伝え
ること、そして未来への種を蒔くこと。
正しく知ってもらえれば、一緒に歩いてくださる人達がきっと増えていく。
「来年、地域の社会福祉協議会の研修でも話をしてください。」
会場を出る際に会長がそうおっしゃった。
素直に有難いと思った。
見える人も見えない人も見えにくい人も皆が笑顔になれる社会。
それはずっと遠い遠いところにあるのは分かっている。
僕の歩幅が小さすぎることも僕は知っている。
でも、ほんの少しかもしれないけれど、また近づいたと思う。
集ってくださったすべての人にありがとうを伝えたい。
心あたたまる国際白杖の日となった。
(2023年11月16日)