書評

出版社から僕に情報が届いたのは前日の9月26日だった。
9月27日の毎日新聞朝刊に「あきらめる勇気」の書評が掲載されるとのことだった。
誰がどのように書いてくださるのかなどは何も分からなかった。
そもそも、毎日新聞そのものは全国紙だが、新聞には地域版などのコーナーもある。
どこの紙面に掲載されるのかも分からなかった。
ただ、これは初めてのことではない。
これまでの著書、いろいろなメディアで取り上げて頂いたが事前情報はほとんどなか
った。
事後情報もたまたま目にした耳にした知り合いから教えてもらうことの方が多かった
かもしれない。
そう考えると、僕の知らないところで紹介されていることも結構あるのだろう。
著者は読んで欲しいと思って書くのだから、本当にありがたいことだ。
まさに、活字の力なのだろう。
今回の書評の内容、複数の友人達が届けてくれた。
一早く僕に届けるために駅まで買いに行ってくれた友人もいた。
これもまた幸せなことだ。
書評を書いてくださったのは門川紳一郎という盲ろうの方だった。
ASL(アメリカ手話)による触手話通訳を利用して全ての授業を受け、
ニューヨーク大学のマスター・プログラム(大学院)を出た最初の盲ろう者だ。
この初めてというのは世界で初めてということだと思う。
現在は社会福祉法人全国盲ろう者協会理事などをやっておられる。
見えない聞こえない、どういうことなのだろう。
その状態で海外の大学で学ぶ、僕には想像さえできない。
僕の著書「あきらめる勇気」をどういうきっかけで読まれたのだろうか?
見えない聞こえない状態でどうやって読んでくださったのだろうか?
僕の頭の中にはいくつものハテナマークが並ぶ。
書評を読み終えて、まず、ただ、うれしいと思った。
そしてそのうれしさは何か特別な清々しいうれしさだと感じた。
言葉で表現することは難しいが、確かに心が満ちていた。
この書評は門川さんが僕にくださったエールなのかもしれない。
感謝しながらこれからも書いていこう。
(2025年9月29日)