ランちゃん、さようなら

愛犬のランちゃんが、天国へ旅立った。
心臓病だった。
突然の旅立ちだった。
動物病院の先生方の懸命の努力も及ばなかった。
11歳7ヶ月、人間に例えれば、60歳代だろうか。
僕が失明して数年後、家族の一員となった。
だから、僕は、ランちゃんの顔を見たことはない。
でも、本当によく、一緒に遊んだ。
いや、遊んでもらった。
触った感覚を、手が憶えている。
泣き声を、耳が憶えている。
鼻がにおいを憶えている。
ぬくもりを。身体が憶えている。
どうしてもお昼の時間が取れなかった僕は、
ペットの葬儀屋さんに、夜のお葬式を依頼した。
夜中のお葬式となった。
焼かれた後のお骨を、
僕は手で触りながら、骨壷に入れた。
葬儀屋さんは、どの部分のお骨かを、丁寧に説明してくださった。
まだ少し暖かなお骨を、
僕はとても愛おしく感じた。
ただ、ありがとうの言葉がこぼれた。
夜中の大江山の山頂付近は雪が降っていた。
ふと、生かされている自分に感謝した。
いつか僕も、骨になる。
それまで、生きている限り、
この命に感謝して、
この道を歩いていこう。
ランちゃん、ありがとう、安らかに。
(2012年12月19日)