いつもの買い物

団地を出てバス停を過ぎて、ポストを越えて、
しばらく歩けば、道が緩やかに下がっている。
そこまで行けば、横断歩道につながる点字ブロックがある。
足裏を点字ブロックの線に合わせて、身体の向きを確認する。
ピヨピヨの音が鳴っていても渡らない。
途中で音が止まると、感の世界となる。
リスクを少なくするためには、鳴り始めに歩き始めることだ。
呼吸を整えて、しっかりと気持ちを前に向ける。
横断歩道を渡るくらいで、大げさなと思われるかもしれないが、
見えないで渡るなんて、そんな感じなのだ。
ピヨピヨが鳴り始めると、白杖をしっかりと左右に振りながら、
進入してくるエンジン音に気を配りながら、
同じスピードで進む。
急に急いだり、ゆっくりなったりしないのも大切だ。
そして、無事反対側に着いたらほっとする。
そのまま直進して、溝にかぶせてあるグレーチングを探す。
金属なので、触覚でも音でも判別しやすい。
グレーチングに沿ってしばらく歩くと、
風が抜ける場所がある。
建物が切れる場所だ。
そこで方向転換して少し歩けば、
お店につながる点字ブロックがある。
あとは点字ブロックの上を歩くと、
勝手に店内に到着する。
こうして歩いていると、本当に点字ブロックのお世話になっていることに気づく。
週に一度くらいは買い物に行く馴染みのコープ、
見えなくなってもう何百回も通っているのだけれど、
やっぱり毎回、行くだけで一仕事だ。
店内に入って、サービスカウンターに着けば、
「今日は何のお買い物ですか?」
店員さんが笑顔で手伝ってくださる。
買い物が終わると、商品を僕のリュックに入れてくださる。
「ありがとうございます。外は暑いから気をつけて帰ってくださいね。」
店員さんの声を聞きながら、
人間が支えてくださる社会に、
心から感謝する。
(2013年7月23日)