夏の終わり

知人から白露を教えてもらった翌日、
旅先の旅館の料理長が、食事の説明をしてくれた。
「名残の鱧とはしりの松茸です。」
日本語の豊かな響き、先人達が織り成してきた産物なのだろう。
ただその響きに触れるだけで、心が落ち着いていく。
部屋に戻ると、
爽やかな秋風の中、一匹のミンミンゼミが思いっきり鳴いていた。
僕は、その声に聞き入った。
あの小さな身体からは想像もできないような大きな鳴き声だった。
これでもかと、鳴き続けた。
愛おしくさえ感じた。
「ミーン ミーン ミーン ミーン ミーン ミッ」
突然、鳴き声は止まった。
静寂が漂った。
セミは、二度と鳴かなかった。
確かに、夏が終わった。
(2013年9月10日)