ごめんなさいのタイミング

バス停を探しながら、
のんびりと歩いていた。
白杖と足裏が点字ブロックをキャッチした。
その瞬間、安堵した。
誰もいないと勝手に思い込んで、
点字ブロックの上を前方に進んだら、
突然、白杖が誰かにあたった。
結構思いっきり当たった。
僕が「ごめんなさい。」と言うのとほとんど同時に、
彼女の「大丈夫ですよ。」という言葉が重なった。
僕達の間の朝の空気が、
やさしく流れた。
間もなくバスがきた。
「肩を持ってください。」
彼女が申し出た。
僕は、肩より肘が歩きやすいことを伝えて、
肘を持たせてもらった。
バスに乗車すると、
彼女は僕を空いてる座席に座らせてくれた。
「ありがとうございます。助かりました。」
僕は、声からして中学生くらいかなと思われる彼女に、
心をこめて感謝を伝えた。
その後、彼女がどの座席に座ったのか、
どのバス停で降りたのか、
僕には何もわからない。
ただ、間違いなく、
僕はいつもよりほんの少し、
幸せな気分でバスの中での時間を過ごした。
日常は、ついつい相手の反応を気にしたり、
空気を読んだりしてしまう自分がいる。
でも、そんなことよりも、
まず、ごめんなさいを言えることが大切なのだと、
改めて学んだような気がした。
それを、中学生が教えてくれたことが、
何かとてもうれしく感じた。
(2014年3月12日)