台風一過の朝

セミが鳴いている。
行きかう車のエンジン音が聞こえてくる。
会話しながら出かけていく母娘の声も聞こえる。
風の音も雨の音も止んだ。
朝の空気には、いつもの日常が戻った。
ただそれだけなのに、うれしくなる。
もう1時間もすれば、白杖を持っていつものように出かける。
たった一日だけの缶詰状態だったのに、
外の空気が妙に恋しい。
毎日外に出れるって幸せなんだな。
ふと、病院のベッドで病気と闘っている友人を思い浮かべる。
一日でも早く元気で帰ってこれますように、
そう願いながら、
そっと窓越しの台風一過の空を眺める。
(2014年8月11日)