街角を曲がって少し歩いたところで、
白杖を持つ手の感覚で点字ブロックに気づいた。
念のために足の裏にも集中したら、
やはり点字ブロックだった。
横断歩道があるのかなと、しばらく立ち止まって車のエンジン音を確認していた。
右側から近づいてきた車のエンジン音が止まった。
「今青ですよ。変わったばかりだから大丈夫ですよ。」
運転手さんが教えてくださった。
わざわざ助手席の窓を開けて、
僕に声が届くようにしてくださっているのも判った。
「ありがとうございます。助かります。」
僕は安心して横断歩道を渡り始めた。
声をかけてくださるということは、
見守ってくださっているということだ。
それはそのまま見えない僕が前に進む力になる。
音響信号の何十倍もの安心感があるから、
人間の声の力ってやっぱり凄いものだ。
横断歩道を渡り終えてしばらくして、先ほどの車が動き始める音が聞こえた。
僕はそちらを向いて頭を下げた。
僕も目は見えないけれど声は出る。
誰かのためになる声でありたい。
(2015念3月20日)