いつもより少し早めの時刻に家を出ていつもの道を歩いてバス停に向かう。
いつもの靴を履いていつもの白杖で歩く。
いつもと違うのは少しきつい雨ということ。
子供の頃から雨は嫌いじゃない。
雨の音も雨の匂いもなんとなく好きだ。
びしょ濡れが好きなわけではないけれど、
少々濡れても気にはならない。
でも目が見えない僕にとって、
傘をさした状態で普通にまっすぐ歩くということはとても難しくなる。
右手で白杖を持っているから左手で傘を持つ。
傘をさしている時、左手だけが曲がった状態になる。
それだけでバランスはおかしくなる。
自分ではまっすぐ歩いているつもりなのに、
右側に寄り過ぎて壁にぶつかり、
左に修正して歩き始めればガードレールにぶつかる。
酔っ払いみたいにあっちへこっちへフラフラしながら歩いているのだろう。
おまけに距離感もなくなる。
いつものバス停を探すのにいつもの何倍ものエネルギーと時間を使う。
目が見えたらなんて泣き言は言わないけれど、
なんとかならないかなと立ちすくんで雨空とにらめっこをする。
わざと傘をずらして雨を顔で受け止めてみる。
雨粒が顔に当たる。
やっぱり雨、嫌いじゃない。
(2015年7月22日)