夏の空

日帰りの東京の翌日はどうしても身体が重く感じられる。
疲労があるのだろう。
しかも今日は予定が集中してしまって、
10時から17時までに四つの会議に出席しなければならないのだった。
僕は気を引き締めて余裕を持っていつもより5分ほど早く家を出た。
団地を出てバス停へ向かった。
横断歩道まで来た時、
昨夜大切な書類をリュックサックに入れようと思いながら寝てしまったことを思い出
した。
愕然とした。
取りに戻ったらバスには間に合わない。
僕はうなだれながら家まで帰り、
書類をリュックサックに詰め込んでから悔しい気持ちでタクシーを呼んだ。
ほどなくタクシーが到着した。
僕は行先の桂駅を告げて、重たい気分と身体を座席に投げ出した。
予想外の出費は余計に気分を重たくしていた。
沈黙の時間だけが流れていた。
突然、運転手さんは空を僕に伝えた。
「雲の形がはっきりしてきましたね。夏の空ですよ。」
「そうですか。夏の空ですか。」
うれしそうに言葉を返した僕に、
「今日も暑い夏の一日になりますね。気をつけて行ってくださいね。」
まるで友達に話しかけるような言葉の響きだった。
うれしくなった。
タクシーを降りて歩き始めた時、
何かしら足取りは軽く感じられた。
今日も頑張ろうと思った。
(2015年7月26日)