落陽

打ち寄せる波のBGMを聞きながら、
東シナ海の潮風の中に僕達は佇んだ。
ガールフレンド達が解説してくれる落陽をイメージしながら、
ただのんびりと魂を自由に開放した。
落陽は最初は白っぽかったが、だんだんオレンジ色に変化し、
やがてその色を濃くしながら水平線に消えていった。
流れた時間が長いのか短いのか感じることはできなかった。
つるべ落としがスローモーションの中で進行した。
その間僕達は波打ち際を歩いたり、桜貝を探したりした。
僕の手のひらに乗せられた桜貝の桜色が見事に脳裏に蘇った。
僕達は一緒にそれを喜んだ。
高校を卒業して40年、それぞれの人生を歩いてきた。
目が見えるとか見えないとか、それはほんのささいなことにすぎなかった。
こうして積み重ねてきた日々が、
ただお互いの生を慈しんだ。
自分に対しても相手に対してもやさしい気持ちになっていた。
それぞれの生命に意味があるとすれば、
僕は何のために生まれてきたのだろうか、
まだ何も判ってはいない。
最後まで判らないのかもしれない。
でもきっと、明日からも歩いていくのだろうな。
「また会おうね。」
握手したガールフレンドの手をとても愛おしく感じた。
(2015年10月17日)