中年男性

朝、桂駅でバスを降りたタイミングで声がかかった。
同世代だと思われる男性だった。
僕は彼の肘を借りて改札口まで歩いた。
改札口でありがとうカードを渡そうとしたら、
以前も貰ったとのことだったが強引にまた渡した。
改札口からはいつものように一人で電車に乗った。
ラッシュだったので入口の手すりをしっかりと掴んでいた。
やがて電車は目的地の烏丸駅に到着した。
電車から押し出されるようにホームに降りた。
点字ブロックに沿って歩き始めた。
誰かが僕の手をノックした。
「ありがとうございます。」
僕はすぐに肘を掴んだ。
改札口に到着して感謝を伝えた時、肘の持ち主が中年の男性だと判った。
タイミングが合わなくてありがとうカードは渡せなかった。
午前に専門学校、午後に大学、二つの仕事を終えて帰路に着いた。
京都駅で用事を済ませて地下鉄に乗った。
僕に気づいた男性がサポートしてくださった。
降車は大丈夫と説明して四条駅で電車を降りた。
ありがとうは伝えたけれど混んでいたのでありがとうカードは渡せなかった。
四条駅のホームを歩き始めたら男性が声をかけてくださった。
「お手伝いしましょうか?」
僕は烏丸駅から阪急電車に乗車予定と経路を説明した。
桂駅まで彼も同じだった。
僕達は友人みたいにして歩いた。
「会社でサポート研修を受けたことはあるけど、なかなか声はかけられなくてね。」
彼の実直さが伝わってきて心がほんのりした。
桂駅に到着してありがとうカードを渡して別れた。
今日は4人のサポーターと出会い、珍しく全員が中年男性だった。
バスターミナルまで一人で歩きながらしみじみとうれしくなった。
爽やかな不思議なうれしさだった。
僕もまだまだ頑張ろうと思った。
(2018年6月17日)