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サイン

京都市の西北にキリスト教系列の男子の中学校がある。
この中学校にくるようになって10年は経っただろうか。
毎年二日間だけ来ている。
一日目に全員を対象に話をし二日目はクラス毎に質疑応答の時間を取っている。
生徒達はそれぞれの疑問を僕に投げかけてくる。
5時限連続の授業は体力も気力も要るのだが、
僕は楽しみながらやっている。
「何故サングラスをしているのですか?」
「地震などが起こったらどうするのですか?」
申し合わせたように5クラスから同じ質問もあった。
中学生らしいまだ幼い内容の質問もあるし、
人間の幸福や生き方に関わるようなものもある。
ひとつひとつの疑問に丁寧に答えていくことが正しい理解につながっていく。
最後のクラスが終わって控室に戻った時、
一人の少年がノートとボールペンを僕に差し出した。
「記念にサインをください。」
僕は著書以外には基本的にサインはしないことにしている。
芸能人でもスポーツ選手でもないし、
そういうことでうぬぼれてしまう自分自身が怖いからだ。
でもキラキラとまっすぐな少年の視線に見つめられて断ることができなかった。
少年の氏名、僕の氏名、そして「ありがとう」という言葉を書いた。
未来の扉に心をこめてサインした。
(2018年6月29日)