ぐうたら

本当に忙しい人は忙しいとは言わない。
そういう人は忙しいと感じる暇がないのだろう。
僕は中途半端なせいか時々感じてしまう。
まだゆとりがある証拠なのだろう。
いや元々がぐうたらだから、
少し忙しくなっただけでそう思ってしまうのかもしれない。
現実逃避のひとつだ。
最近も忙しいと感じる日々を送っていた。
ひとつ仕事が終わるとふたつ仕事が生まれるというような感覚だった。
今日の仕事は京都府の北部にある宮津市での講座だった。
僕の最寄りからは特急電車を利用しても片道3時間はかかった。
宮津までの特急電車の中でもパソコンを出して仕事をしてしまう始末だった。
宮津駅の改札口にはボランティアさんが待っていてくれた。
彼女はこの春まで京都市内で大学生活を送っていて僕の活動をよく手伝ってくれた。
卒業して宮津市の近くに就職した。
今回僕が宮津市での仕事と知って手伝ってくれたのだ。
講座が終わると彼女は僕を車の助手席に座らせた。
そして海沿いの道を車を走らせた。
静かな砂浜の波打ち際まで案内してくれた。
僕達は腰を降ろして海の音楽に聞き入った。
波の音、風の音、海鳥の鳴き声、自然のコンサートホールだった。
音の強弱、変化、動き、見えなくなって手に入れた感覚かもしれない。
耳がよくなったわけではないが深く感じられるようになったのは間違いない。
空気が僕を包み込み脳までが溶けていくような時間だった。
帰りの特急電車では仕事はしなかった。
忙しくなる必要がないことを再確認した。
ぐうたらはぐうたららしくゆっくりのんびりやっていこうと思った。
(2018年9月9日)