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スキップ

始発からのバスだった。
問題なく座席に座れた。
目的地まで50分くらいかかるのでリュックサックを肩からはずして足元に置いた。
パソコンを出して仕事するか、スマホで音楽を楽しむか一瞬迷ったが、
遊び大好き人間の僕は音楽を選んだ。
リュックサックからブルートゥースイヤホンを取り出して耳に装着した。
ソニー製で音は外に漏れないタイプのものだ。
それからスマホでYouTubeのアプリを起動させた。
ミニコンサートが始まった。
懐かしい楽曲が僕をどんどん幸せにしていった。
楽しい時間だった。
停留所案内のアナウンスで目的地のふたつ前のバス停を確認できた。
僕は後片付けをして降車の準備をした。
僕の降りる予定の停留所のアナウンスが流れた。
僕は降車ボタンを探した。
座席の周囲をあちこち触ったが見つけられなかった。
停留所はどんどん近くなってきた。
あせった。
大きな声を出して運転手さんに知らせるしかないかと迷った瞬間、
降車ボタンが押された音がした。
「次、停まります。」
案内放送も流れた。
ほっとした。
間もなくバスは停留所に停まった。
先頭近くの座席の僕は間違いなく一番最初に降車口に向かった。
「気をつけてゆっくり降りてくださいね。」
運転手さんに見守られながらバスを降りた。
一歩進んだ時、バスのドアが閉まった。
降りたのは僕だけだった。
僕を見ていた誰かがボタンを押してくださったのだと分かった。
僕はバスを振り返ってお辞儀をした。
そっと見ていてくださる人もいるんだ。
歩き始めたら先ほどの音楽が頭の中で蘇った。
スキップをしたい気持ちになった。
(2019年6月20日)