キンカン

小学校時代の友人からキンカンが届いた。
春姫というブランドのキンカンだ。
春姫をひとつ口に入れる。
大粒で口一杯になる。
最初はゆっくり齧る。
果汁が口中に広がる。
甘さの中野ほろ苦さが春を主張する。
それを確認できたらモグモグと食べる。
種を山車ながら食べる。
春が口中から食道を通って胃袋にたどり着く。
そして最後に脳まで届く。
かけがえのない幸せを感じる。
彼女とは小学校からずっと連絡を取っていたわけではない。
卒業して40年くらいのブランクがあった。
たまたま新聞記事で僕のことを知った彼女が連絡をとってくれたのだ。
40年という時間を超えて人間同士は再会できる。
こういうことができるのが人間という生き物の魅力だ。
今年出会った人と百歳を超えてからまた会えたらうれしいだろうな。
そんな風に考えながら生きていければいいのかもしれない。
(2021年2月14日)