富士山

コロナで対面の講演会が実現するか不安だったが、
なんとか実施することができた。
ふとしたことで縁がつながった東京の高校に3年連続で伺ったことになる。
講演を聞いてくれた高校生と帰路の北千住駅で偶然出会った。
「講演してくださってありがとうございました。」
彼女は爽やかに挨拶をして改札口に吸い込まれていった。
京都であっても大阪であっても東京であっても、高校生は輝いて見える。
そういう年頃なのかもしれない。
彼女達が未来を創ってくれると思うと出会えたことに感謝の思いだ。
僕はすっかりいい気分で東京駅に向かった。
東京駅でサポートしてくださった駅員さんはとても丁寧だった。
何両目がいいかとか、トイレの近くがいいかとかいろいろ尋ねてくださった。
僕はどこでも大丈夫と告げた。
駅員さんは最後までいろいろ考えておられるようだった。
車内に入ってから僕を右側のシートに案内しようとしてそれを変更された。
「左側に変更しましょう。こちらが富士山が見えるんです。」
僕は吹き出しそうになるのをこらえて返事をした。
「ありがとうございます。」
思いは例え少々ずれていても構わない。
思いがあることが素敵なことなのだ。
僕は雪をかぶった富士山を想像しながら車窓を眺めて過ごした。
(2021年2月19日)