丹後への旅

7時過ぎにはタクシーに乗った。
単独で丹後半島まで出かけるので駅での援助依頼に時間を要すると考えたからだ。
でも実際は思ったよりもスムーズに動けて、予定通りに特急はしだて号に乗車した。
天橋立駅で乗り換えて昼前には岩滝口駅に着いた。
関係者がホームで待っていてくださった。
秋の爽やかな風を感じながら迎えの車に乗った。
会場の控室には食事の準備もしてくださっていた。
バラ寿司という地元の郷土料理だった。
これをこの地域の視覚障害者の先輩に教えてもらったのはもう20年くらい前だ。
すっかり好物となってしまっていた。
それだけで単純な僕は幸福感に包まれた。
いい気分で会場の人達に語り掛けることができた。
僕の講演はともかくも、その後のシンポジウムは素晴らしいものだった。
主催者の準備もしっかりしていて、司会者もいい流れを作ってくださった。
皆が同じ未来を見つめる時間となった気がした。
車椅子の登壇者がお正月の箱根駅伝の観戦が楽しいとおっしゃった。
見えない僕も毎年ラジオで観戦していることをお伝えした。
そういうことを普通に話せる空間がいいなと思った。
まとめをしてくださった主催者の言葉も的確に最後を飾っていた。
最初から最後までこんなにうまくいくのも珍しい。
そういうイベントに参加できたことをとてもうれしく感じた。
そして感謝した。
帰路はコウソクバスを利用した。
関係者がバスの仲間でサポートして見送ってくださった。
ぬくもりが伝わってきた。
それぞれの立場で頑張っていける気がした。
いい旅となった。
(2021年10月30日)