バトン

中学校の生徒達の感想が届いた。
結構な量だったがメールで届いたので読むのには困らなかった。
パソコンが文字を読んでくれるので、誰かに読んでもらっているような感覚だ。
届けてくださった先生の労力は大変だっただろうなと思った。
ひとつひとつの感想が心に染み込んだ。
生徒達が未来を見つめながら書いてくれているのが伝わってきた。
知ったことを家族や友人に伝えたい。
困っている白杖の人を見かけたら必ず声をかける。
信号が青になったら教えてあげたい。
私たちが皆が笑顔になれる社会を創ります。
知らなかったことをたくさん知れた。
バスの席が空いていたら案内します。
可愛想の言葉の意味を学んだ。
もっといろんな人に松永さんのお話を聞いてほしいです。
そして一番最後に二人の先生の感想も添えてあった。
一人の先生は小学生の頃に僕の話を聞いてくださったらしい。
点字名刺を大切にしていたとも書いてあった。
15年程前のことだと思う。
感謝とエールが綴られていた。
やさしさに満ちていた。
もう一人の先生はたまたま僕の著書の読者だった。
コスモスの表紙との出会いをそっと伝えてくださった。
共有した時間への感想も記してあった。
きっと生徒にも話をされたのだろうと思った。
生徒達だけではなく先生方も一緒に未来を見つめる時間となったのが伝わってきた。
うれしく感じた。
幸せなことだと思った。
見えなくなった僕ができること、
僕にでもできること、
僕なりに一生懸命やってきた。
書くことも話すことも目的は同じだった。
ささやかな活動、祈りながらやってきたのかもしれない。
ほんの少し、未来に近づけたかな。
そんな気がした。
でもまだまだだ。
まだまだ頑張る。
出会った子供達が次の時代にバトンを引き継いでくれるだろう。
そしていつかきっと、皆が笑顔になる。
見える人も見えない人も見えにくい人も、
皆が一緒に笑顔になれる日がきっとくる。
さすがにあと15年は無理だろう。
もう少し頑張るつもりだ。
(2021年12月8日)