ドヤ顔

雑草の勢いは僕が草抜きをするスピードよりも勝っている。
呆然としてしまう。
でも除草剤などは使用したくない。
無駄な抵抗と自覚した上での草抜きを続けることにした。
熱中症も怖いので30分に一回くらい水分補給を心がけている。
途中で手を止めて玄関に置いてあるお茶を飲む。
水筒をとも思ったがぬるくなるのでそれはあきらめた。
お茶を飲んだ後、元の場所まで戻るのが一苦労だ。
歩数を数えたりしたが手がかりがないので方向が定まらない。
なかなか元の場所に戻れないのだ。
悔しさも感じていた。
ふと思いついた。
アイフォンにはアップルミュージックを入れてあるので好きな音楽が聴ける。
草抜きを始める前にアイフォンに話しかけた。
「桑田佳祐を聞きたい。」
すぐに桑田佳祐の曲が流れ始めた。
草抜きも一気に楽しくなった。
球形でお茶を飲む時、そこにアイフォンを置いたまま玄関に向かった。
お茶を飲んだ後は音楽に向かって歩けばいいのだ。
元の場所にたどり着いた瞬間、僕は自分でも分かるくらいの思いっきりのドヤ顔だっ
た。
うれしくなっていくつかの曲をつい一緒に口ずさんだ。
夏空の下での音楽もいいものだと思った。
雑草達も桑田のファンになるかもしれない。
(2022年6月28日)