当事者

地下鉄からバスに乗り換えるために二条駅を歩いていた。
お盆の午前8時の二条駅は空いていた。
「せんせーい!」
遠くから声が聞こえた。
僕のことかなと立ち止まった。
しばらくして彼女は駆け寄ってきた。
介護の仕事をしている彼女は夜勤明けとのことだった。
当たり前だけど介護の仕事などに関わっている人達はお盆も夏休みも関係なく働いて
おられるのだ。
改めて感謝しなければと思った。
福祉の専門学校で彼女と出会って10年になる。
いつどこで出会っても声をかけてくれる。
今回もバス停までサポートしてくれバスがくるまでの時間を付き合ってくれた。
そしてバスが到着すると乗降口までサポートしてくれた。
「乗ってすぐの左側が空いています。
行ってらっしゃい。」
バスに乗車するタイミングでの彼女の声だった。
「ありがとう。行ってきます。」
僕は聞こえないだろうけとそう返した。
いろいろな学校などで出会った人達がこうしていろいろな場所で手伝ってくれる。
しかも見えない僕が何が不便で不自由かを理解してくれている。
有難いことだと思う。
僕がいい先生だったということではない。
やさしい人達が学んでくれたということだ。
当事者の僕が先生の端くれにいるのも少しは意味があることだと思っている。
(2022年8月17日)